H24年入管法改正について
H24年7月入管法改正について
今年の七月に入管法が改正されました。
従来の在留管理制度では,外国人に上陸許可や在留期間更新許可の付与をする場合など、在留に関する審査を行う際に情報把握を行い、外国人に関する必要な情報を取得するという方法をとっていました。
しかし、現在では外国人の数も多くなり、在留外国人の中には日本国内に安定した基盤がなく転職・転居を繰り返す者も多くなってきています。
そのため、我が国において、外国人の居住実態などの在留状況を正確に把握することが困難となり、また、外国人に対する公正な在留管理や、市区町村の外国人に対する適切な行政サービスを提供することも難しくなるという問題が生ずることとなっています。
そこで、このような問題点を是正するため、日本に中長期間在留する外国人を対象として、法務大臣が公正な在留管理に必要な情報を、継続的に把握する事が出来る制度が今回の改正です。
そのため、これらの事を担保するために、罰則等も設けられました。
一方で、今回の改正には、適法に在留する外国人については、その利便性を向上させるために、在留期間の上限の伸長や再入国許可制度の見直しなどを行っています。
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主な改正のポイント
対象となる外国人
新たな在留管理制度の対象「技術」や「人文知識・国際業務」などの就労資格により企業等に勤務する人、「留学」などの学ぶ資格により、学校に通う人、日本人と結婚して「日本人の配偶者等」の在留資格により生活している人、「永住者」の在留資格を有している人は新制度の対象となります。
しかし、観光目的で日本に短期滞在する者や、俳優や歌手など、芸能活動目的で来日し、「興業」の在留資格で、3ヶ月以下の在留期間が決定された者などは、中長期間在留する外国人には該当せず、新制度の対象にはなりません。
在留カードの交付
在留カードは中長期在留者に対し,氏名等の基本的身分特定事項,在留資格,在留期間等を記載した在留カードを交付し、一定の重要事項に変更があった場合には法務大臣に届け出る義務を負わせることにしました。
在留カードは対象となる外国人に対し上陸許可や在留資格の変更許可申請、更新許可申請等による許可に伴って交付されます。
中長期外国人が外国人登録証明書を所持している場合、一定期間は、その外国人登録証明書を在留カードとみなすこととなっていますので、新たな在留管理制度導入後、直ちに在留カードに変更しなくても大丈夫です。
但し、希望すれば変更してもらうこともできます。
又、中長期在留者は、在留カード記載事項のうち、氏名、生年月日、性別、国籍の属する国等に変更を生じた場合には、変更があった日から14日以内に最寄りの地方入国管理局・支局・出張所で、法務大臣に変更の届け出をする必要があり、届出を行うと当該外国人に対し新たな在留カードが交付されます。
上記以外で、在留期間の途中で所属機関や身分関係に変更があった場合に、在留資格の区分に応じて、法務大臣に対し変更の届出をしなければならない事になりました。
【例えば】、所属機関の名称・所在地の変更、当該機関からの離脱・移籍、所属機関との契約の終了・新たな契約の締結等があったときには、14日以内に、地方入国管理局等において法務大臣に対し随時届出る必要があります。
対象となる外国人にとっては少し面倒な事になります。
入国する際の手続き
2012年7月9以降に日本に入国する場合、上陸する空港により手続きが異なります。
≪成田空港、羽田空港、中部空港及び関西空港≫
入国審査官が、旅券に上陸許可の証印をすると共に、上陸許可により中長期在留者になった者には在留カードを交付します。
この際、交付するための専用レーンが設けられています。
≪その他の出入国港≫
入国審査官が、旅券に上陸許可の証印をすると共に、上陸許可により中長期在留者になった者には上陸許可の証印の近くに「在留カード後日交付」と記載されます。
その後、上陸許可により中長期在留者となった方が市区町村の窓口で住居地の届出をした後に、在留カードが交付されます。
在留期間の最長が5年
「在留期間5年」と決定する際の基準というものがはっきりしていませんが、今の段階では1つの「案」として以下のものが考えられています
「技術」、「技能」「人文知識・国際業務」等の在留資格をお持ちの外国人については
- 入管法上の届出義務を履行している
- 外国人が子を有していて、子が小学校、中学校に通学している
- 契約機関が大企業等
- 就労予定期間が3年を超える者
といった事を満たしていなければならないとされています。
「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」等の在留資格をお持ちの外国人については
- 申請人が入管法上の届出義務を履行している
- 各種の公的義務を履行している
- 外国人が子を有していて、子が小学校、中学校に通学している
- 生計維持者が納税義務を履行している
- 家族構成、婚姻期間や婚姻を取り巻く状況からみて婚姻および配偶者の身分に基づく生活の継続が見込まれる者
を満たしていなければならないとされています。
再入国許可制度の見直し
みなし再入国許可制度の新設
有効な旅券と在留カードをもつ外国人が日本で引き続き在留する事が出来るために出国後1年以内(それ以前に在留期限が到来する場合はその日まで)に再入国する意図を表明して出国する場合には、原則として、事前に再入国許可を受ける必要がなくなりました。
注意すべき事はみなし再入国許可で出国した者が、その有効期間を海外で延長する事が出来ません。ですから、この制度を利用した外国人は必ず1年以内に入国しなければなりません。
罰則等について
在留資格の取消事由
新たに追加された在留資格取消事由
- 偽りその他不正の手段により在留特別許可を受けたこと
当然のことであります - 配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6ヶ月以上行わないで在留していること(正当な理由のある場合を除く)
例えば、外国人を妻に持つ日本人男性が世帯の住所地と異なる地に単身赴任する場合には、当該夫婦の婚姻実態如何によっては在留資格取消の対象とされてしまう恐れがあります。 - 上陸後又は届け出た住居地から退去後90日以内に住居地の届出をしないこと(正当な理由のある場合を除く)や虚偽の住居地の届出をしたこと
例えば、外国人を従業員として採用した場合や、外国人従業員を国内の別の支店に転勤させたような場合に、当該外国人従業員が、90日以内に住居地の届出を怠れば、在留資格が取り消されてしまいます。
退去強制事由
- 在留カードの偽造変造等の行為
外国人が、所持ている、提供した、唆した、助けた者等が対象になっています。 - 中長期在留者の各種届出等に関する虚偽届出や在留カードの受領、提示義務違反により懲役に処せられた場合
罰則
1年以下の懲役または20万円以下の罰金
- 新規上陸後の住居届出、在留資格変更等に伴う住居地届出、住居地の変更届出、住居地以外の記載事項の変更届出、所属機関等に関する届出に関し虚偽の届出をした者
- 在留カードの有効期間の更新申請、紛失、汚損等による在留カードの再交付申請を14日以内にしなかった場合
- 在留カードを受領しなかった者
- 在留カードの提示をしなかった者
- 他人名義の在留カードを行使した者(未遂は罰する)
- 行使の目的で他人名義の在留カードをを提供し、収受し、または所持した者(所持にかかる部分を除き未遂は罰する)
- 行使の目的で、自己の在留カードを提供した者(未遂は罰する)
20万円以下の罰金
- 新規上陸後の住居届出、在留資格変更等に伴う住居地届出、住居地の変更届出、住居地以外の記載事項の変更届出、在留カードの返納を14日以内にしなかった場合
- 在留カードを携帯しなかった場合
1年以上10年以下の懲役
- 行使の目的で、在留カードを偽変造した者
- 偽変造の在留カードを行使した者
- 偽変造の在留カードを提供し、又は収受した者
5年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 行使の目的で、偽変造した在留カードを所持した者
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